事件から一年か。
アキバ。
実をいうと闇生はあの日、現場を犯行の一時間半まえに通過している。
べつにいつもと変わらぬホコ天直前の光景がそこにはあって。
警官らが、通行止めのためのカラーコーンを路上に並べていた。
その一時間半は、
ゆるぎのない一時間半であるからして、
「もしも」
あとすこし遅くあの交差点に差し掛かっていたら。
そんなシュミレートは成立しないのではあるが、他店の同僚はひょっとしたら巻き沿いをくった可能性がなくもない。
勤務中で屋外の様子を知らなかった彼らは、やたらヘリの音が騒がしいと。
業務連絡の電話のついでにそんなことをこぼしていたっけ。
事件のあと半年ばかり、あの交差点には近づかないようにしていた。
野次馬的なものも、
マスコミ的なものも、うるさくてかなわない。
考えたって事件の本質なんて掘り起こせそうもないのだが、頻発する事件の、そんな仕方のなさに日々麻痺させられていくことこそ、御免こうむりたいものである。
なぜって、
それもまた、犯人が克服できなかったニヒリズムの典型なのだから。
☾☀闇生☆☽