壁の言の葉

unlucky hero your key


 コンビニのおでん、って食べます?
 あたしゃ食べたことがないのです。
 実は。
 そもそも、おでんの具の種類につまびらかでないという理由もあります。
 そりゃあ、あります。
 なんせひとりでおでんを食べに行くということ自体が、事態であるという致命的な半生でもありまして。
 なんていう理由のほかに、やっぱあのレジに並んでいるお客さんの流れをせき止めてまで、っていう小心が、あるのですな。やっぱ。
 公共料金の支払いでも、レジがすくのを見計らいますもの。
 どうしたって。
 でもって、こそこそっと。
 ぴっ、なんて赤裸々にスキャンされたら、思わず、
「しっ」
 たしなめます。
「もお、おばか」
 なあんて理由だけでもないのだ。
 おでん。
 実は、ちょっち衛生的に疑っちまうのであーる。
 いや、なに、そのへんのところは店側も念入りに考慮してはいるのでしょうがあ。
 あんな埃っぽいところに、蓋もきちんとしないで日がな一日放置されてあるでしょ。
 濛々と湯気立てて。
 んで、大概がレジのそばだから、人の通りも頻繁なわけで。
 ダンボールを積み上げた搬入の業者なんかも、行き来する。
 でもって、並んでいるお客さんがあの周辺で咳だの、くしゃみだのを手放しでぶっぱなすわけだ。

 
 空爆かと。

 
 あれ、なんなんでしょうね。
 検討中にはひとつも咳をしていなかった人が、いざカウンターに向かうと、店員を前にして急に咳き込んだりするのは。
 きまってその咳は、手放しなのだ。
 NO BORDERなのだ。
 この時期になると、あたしゃ何度もお客のツバキを顔に浴びるよ。
 緊張するのかな。
 させちゃってるのかな。
 いや、
 だったら、手でカバーするでしょーに。
 

 なんか神経質なこと言っちゃって、すんません。


 ついでに、もうひとつ。
 満員電車のなかのおっさん鼻ほじり。
 あれもいけません。
 いけません。
 百万歩ゆずって、ほじるのはヨシとして。
 その獲物を撒布するのは、勘弁、勘弁。
 ケータイに夢中になりながら、無心に鼻ほじりしてるのいるでしょ。
 でもって、ブツを指でぴんぴん、とはじきますでしょ。
 テポドンやら、ノドンをさ。
 見境なしだ。暴君は。
 もおね、
 ディフェンスのしようがないのである。
 イージス艦は助けてはくれないのである。
 たとえ自分に被害が無くとも、ぴんぴんの射程距離内で麗しきOLさんが居眠りしていたりすると、その光景に、しこたま突き刺されるのである。
 仮に、彼女が口を開けて天井向いて寝ていたとしても、集団的自衛権は発動しないのだ。
 暴君の良心だけを信じて、ただただ祈ることしかできないのであーる。


 不肖闇生、そんなぴんぴん氏に電車の中で挟まれたことがござった。
 かたやゲームに熱中しながら。
 かたやなんか知らんが呆然と虚を見つめながらだ。
 ああいう状況では正気な者が馬鹿を見るわけで。
 同じアホならおどらにゃ損、損っ。
 オセロのごとく挟まれたらころんっと同調すべきなのだろうか。
 こちらも負けじとほじり返せばいいのだろうが。
 

 のんのんのん。
 虫けらにも五分の魂だ。
 マナー以前に、羞恥心が働いちゃうのだわ。
 それにエロ屋がぴんぴんやってたんじゃ、そのまんまな気もするわけよ。
 ベタはいかん。


 って、
 そういう問題でもないか。
 







 ともかくだ、
 手放し咳とぴんぴんだけは、やめてくれ。
 師走の暴君たちよ。



 ☾☀闇生☆☽


 まどみちおの詩集に『はなくそぼうや』という詩があったのを思い出した。
 あの、『やぎさんゆうびん』だとか、
 ビスケットが増えていく『ふしぎなポケット』や『ぞうさん』で有名な詩人です。